オタク自省録

オタクのオタクによるオタクのためのブログ

オタク、渋谷にて疎外感を感じる

三月吉日、ゴミオタクは渋谷に舞い降りた。およそ東京とは思えない、むしろ中国地方にある筆者の生まれ故郷すらも彷彿とさせる僻地(筆者の下宿先)から久方ぶりに都心に繰り出したその目的は、就職活動である。大学に入学して3年間、堕落に堕落を重ねもはやサルベージ不能と思われる人間としての矜持を這う這うの体で取り繕い、世の企業を欺くことが筆者の当面の任務となった。

 

三月一日に所謂『就活解禁』が行われ、経団連に加盟している諸企業が新卒向けマイページの公開を行った。三月一日午前九時ではなく、午前零時にマイページを公開する当たり、日本の働き方改革は永遠に前進しないと確信したところであるが、解禁と当時にページへ殺到し、サーバーダウン寸前まで説明会参加を希望する学生の方にも、溢れんばかりの社畜としての素質を企業側へアピールしている点で落ち度が見受けられる。

さて、そんなこんなで筆者は現在遅刻をしているわけだが、これには理由がある。筆者が下宿先の最寄り駅に着いた途端に人身事故が起こり、JR中央線が運転停止となったのだ。もう帰りたい。筆者心からの声である。これは「今日は面接など行かずに家でごろごろせよ」という神からのお告げに違いない。そう思ったものの、筆者が信仰しているのは女子高生のみであったため、右のような天啓は下ってないようである。仕方がないので別経路でなんとか渋谷へ辿り着くよう行動をはじめ、同時に面接を予定している企業に遅刻の連絡をした。

とんだ骨折りであるが、ともかく渋谷へ辿り着くことには成功した。面接に対する緊張と面倒くささが入り混じり、やや乱れ気味の歩調でハチ公前出口から下界へ降り立つ。そこで筆者の目に飛び込んできたのはハイカラなファッションをした若人たちの姿であった。その衝撃たるや、筆者は赤面のあまり、上を向いて歩くことがままならなかった。渋谷に佇む彼ら彼女らにすればいつも通りの何の気なしの姿なのだろうが、こちとら寝間着で最寄り駅を徘徊する頓珍漢である。渋谷という街を覚悟して僻地を発ったとはいえ、オタクに渋谷は難しい。同じ若者として彼ら彼女らと対比されることを避けるべく(誰も対比などしていないのだが)煙に巻くように面接会場に向かった。

 

会場は宮益坂を少し登ったところにあるオフィスであった。いつも通り至極適当な受け答えをし、逆質問ではIR情報を用いて企業研究をしましたアピールをする。就活解禁以前から外資コンサルティング企業に応募し、超人的ロジカルシンキングを持つ面接官を前に跡形も残らぬほど叩きのめされた、生々しすぎる筆者の経験がここで活きる。いや、イキる。面接官は筆者のことをオタクと感づいたかもしれないが、ゴミオタクであるとはゆめゆめ思わなかっただろう、というのが筆者の感想である。深掘りするところのない、実に浅薄な筆者の人間性を、妄想と詭弁で取り繕うことに精を出したのが功を奏した。

 

というわけで難色を示した旅立ちだったものの、悪くないかたちで面接の旅は一応完結した。調子がいいのでどこか渋谷のお洒落スポットで写真でもしばいて帰ろうと思いながら宮益坂を下っていると、とある看板に目が付いた。

 

『森の図書室』

 

以前筆者が夜間にポテトチップスなどを召し上がりながらネットサーフィンをしていた時に見かけた粋なカッフェである。店名を読んで字のごとく、読書家にとって垂涎の内装が施されており、兎角『本』ということに関しては一見の価値があるという。

行ってみるか。筆者がそう思うのに時間はかからなかった。