オタク自省録

オタクのオタクによるオタクのためのブログ

読書記録 君の膵臓を食べたい

実はこの本、去年の夏に読もうとして結局読まなかった一冊である。地元のオタクが「これほんと感動したけぇ、最後泣いたわ普通に~」と仏頂面で勧めてきたので購入した次第であるが、当時(8月)ちょうどこの作品がドラマ映画として劇場上映されていたタイミングであり、なんとなくミーハーな気がして読むのを後回しにしてしまった。さらに言うと、筆者の関心はあの仏頂面のオタクがどのような顔で泣いたのかという点にあり、この作品にはなかった。

 

『君の膵臓を食べたい』

f:id:soa_wing:20180127164711j:plain

この作品の読書記録をつけるにあたって、何ら前向きな評価ができないことを先に断っておく。この作品は、膵臓に重い疾患を抱え余命あと少しということを隠して毎日を過ごすクラスの中心人物である少女と、それとは正反対に誰とも喋らず文庫本とにらめっこして生きてきた陰キャの物語である。ひょんなことから陰キャが少女の秘密=膵臓の重病を知ってしまい、そこから始まる二人のラブストーリーである。いや、物語を通して二人の行動は『恋人ごっこ』に終始していたため、ラブストーリーなのかどうかは軽率に判断すべきではないかもしれない。

 

まず主人公の陰キャ、こいつは絵にかいたような無気力系主人公である。昨今のライトノベルに蔓延している、何の取り柄もなく、何の努力もせず、何の社会的価値もないにも関わらず、異世界転生して強大な力を獲得し、地位と名誉と女を欲しいままにするアレである。異世界に転生しなかったところが数少ない本作品の褒めるべきところかもしれない。クラスの中心たる少女が積極的に関与することで物語は進んでいくのだが、少女が陰キャを気にかけた理由がわからないし、陰キャは少女に対しても無関心を決め込むばかりか、オタク特有の妙に知り物顔な言い回しで受け答えする。このような人物にコミュニケーションを取り続けた少女には、ノーベル平和賞とかを与えたい。

そんな陰キャを主観とした物語の性質上、起承転結の起承部分、すなわち全体の半分近くのページが味気なく平坦な構成になっている。無気力系主人公が「やれやれ、僕は女の子なんか興味ないんだけど」とかぬかしながら、美少女と遊び回るだけの描写が延々と続く。劇場版ではイケメン俳優が主人公だから視聴者も問題なく物語の世界を楽しめるのだろうが、こちとら文字を追うだけの小説である。特に主人公が容姿的に実は優れている、といった描写もないまま、陰キャが美少女とキャッキャウフフするのを傍観するしかない読者の気持ちを考えてほしい。羨ましいわ普通に。

 

そんなこんなで苦行の前半を乗り越えると物語は急に動き出す。少女との接触の中で陰キャは人間への興味を取り戻し、それからなんやかんやあって少女は死亡。喪失感の中、少女の遺書及び日記が記されている『共病文庫』を読み、前向きな感じになる主人公こと陰キャ。人を殺しておいてあとから日記を読ませてくる物語で感動できないものはないので、殊更『君の膵臓をたべたい』が感動面で優れているとは言い難い。結局最後まで、ラノベ感が拭えなかった作品であった。

 

筆者は基本的に全国的に流行している大衆文化には一見の価値があると思っているので、君の名は。』『打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか』なども劇場あるいは小説で鑑賞している。しかし『君の膵臓をたべたい』を含めて、特段大流行するほどの面白さを感じられなかったのも事実である。これはおそらく、性根が捻くれたゴミオタクたる筆者の感性が世間一般と乖離していることにあるだろう。見返してみれば、当レビューでマイナス評価をしているのも主人公への妬み嫉みである気がする。筆者が純粋に作品を楽しめる日は果たして来るのか。今後の課題である。