オタク自省録

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男汁と迎える新年

随分と久しぶりに森見登美彦の著書を拝読している。彼の随筆が集まった『太陽と乙女』という本なのだが、筆者が憧れてやまない文体がページいっぱいに詰め込まれており、初心を取り戻した実感がある。森見登美彦的文章に薫陶を受け奇妙に捻くれた文章を自分なりに模索していたものの、やはり作文初心者故に方向性を見誤りむやみに奇妙な文章へと堕落してしまったのが昨年の筆者である。森見登美彦氏の文章を改めて咀嚼し、模倣するところから再スタートするべきかもしれない。

 

そんな反省ばかりの三が日を過ごしていると友人P氏から連絡が入った。「明日遊びませんか?」久方ぶりの連絡に困惑しながらも、とりあえず二つ返事で「よろこんで」と返しておいた。事情を聞くと、何やら観光目的で上京しており、もう一名の友人と遊ぶので筆者氏もご一緒にいかがかな?ということらしい。しかしそのもう一名の友人とやらが既に大殿籠られていたため「決まったらラインしてや」と適当なやり方で筆者も入眠した。

翌朝六時、ライン通知を見ると豊島園に行くことになっていた。田舎者の筆者は「豊島園とは何ぞや?」というところからスタートである。検索してみると筆者の住まいから3回の乗り換えを経て1時間かかる場所に位置するテーマパークらしい。三が日直後だというのに、むさ苦しい男3人が寄ってたかって豊島園である。この男たちはどのようなプロセスを経て豊島園という結論に至ったのだろう。頭がおかしいのではないかと布団の中で凍えながら思った。

しかしこの面白くもなく、向かうのが実に渋い状況下に敢えて身をさらすことでへんちくりんな文章が書けると思い込み、今に至る。現在筆者は豊島園スケートリンクの上に立っている。アイススケートなどは小学生ぶりであったので、多少の緊張と若干の恐怖をもって挑んだが、日ごろの筋トレで培った抜群の運動神経が幸いし、スイスイと滑走することができた。

一方友人P氏はというと、生まれたての小鹿のようなステップでスケートリンクを転がりまわっている。周囲には子連れの家族かご敬老しかいない。その傍ら、若気を持て余した挙句寂れかけた遊園地ですってんころりんしている成人男性。筆者の新年に相応しい光景だなあと相好を崩さずにはいられなかった。友人P氏は気息奄々である。

 

二時間ほどの練習の末ようやくスケートリンクを一周できるようになった頃、友人P氏が一生分のアイススケートを終えたような顔をしていたため、豊島園を離れ、池袋で昼食を摂る段取りとなった。昼食は筆者の粋な計らいによりビタースイーツビュッフェとなった。インスタ映えを狙った乙女たちが群雄割拠するランチに降り立った三人の肉団子。「何をしに来たんだ」といった表情の店員に負けぬよう「抹茶チョコクレープください」と主張する筆者であった。友人たち二人は映像系に造詣が深く、何やらふたりで話し込んでいたので、筆者は延々とビュッフェと向かい合っていた。

続いて向かったのは猫カフェである。勿論、男三人で。友人P氏が無類の猫好きだったことを忘れ、うっかりと「猫カフェ行きたいなぁ」などと呟いてしまった筆者に今回の責任があるように思う。迎合すべからざる思考回路を持つ友人P氏は猫カフェに強い執着を見せ、ええいままよと適当な猫カフェに侵入するや否や、猫じゃらしを巧みに操り猫様と対峙し続けた。かくいう筆者も、実際猫カフェに入ってみるとけしうはあらず。男汁に溢れた三が日直後に絶対的癒しを織り交ぜたことにより、この一日がひどく充実したものになったような気がする。やはり気のせいであることに気づくのは帰宅した後である。