オタク自省録

オタクのオタクによるオタクのためのブログ

女子高生 VS 筆者

数年前は同じ学び舎に女子高生が無尽蔵に広がっていた。彼女らと話すもよし、じゃれ合うもよし、あるいは恋をするもまたよし。筆者には女子高生と接触する正当な権利が与えられていた。それが今はどうだ。話しかけることは愚か、半径三メートル圏内に踏み入っただけで国民保護サイレンが鳴り響く有様である。時間の流れとはかくも無情なものかと思い知らされるばかりである。

そんな筆者が唯一合法的に女子高生と触れ合える場がある。それはバイト先の居酒屋だ。営業中に店の物を勝手に飲み食いしても平気というポイントが筆者の目に止まり、かれこれ二年近く労働者として従事している。お小遣い欲しさにそこにやってくる女子高生バイトに対して先輩風を吹き下ろすのが筆者の最近の生きがいとなっているが、執拗に吹き荒れる先輩風に辟易した女子高生らが筆者に対して実に悪辣な態度をとるようになってきたのもまた事実。

このままではバイトという名目のもと築き上げた非実在の社会的地位が瓦解する。現実の世界では女子高生こそがカーストの頂点であり、ゴミオタク大学ゴミオタク学部ゴミオタク学科で蠢いているオタクこと筆者のような人種は第三身分でしかないことに気づかれてしまう。ありもしない地位に縋り付く筆者の姿が露呈するのはもはや時間の問題と思われた。

 

そしてある日。

 

「先輩ってなんでそんなに女子高生が好きなんですか?」

 

無垢な顔をした女子高生その1が俺に詰め寄ってきた。しかしその質問は愚問のように思われる。というのも、筆者は女子高生愛護団体総代としての誇りを固持しているので、『女子高生という時代の素晴らしさ』『恋愛対象でもなく性的対象でもなく、父性に訴えかけてくる愛護対象としての女子高生』などを、大学講義の如き自己満足で日々語っているのだ。勿論、女子高生に対しても。

 

「いつも言ってるとおりやで」

「でもそんなに良いものじゃないですよ私達」

「良いも悪いも酸いも甘いも全てを総合して女子高生が好きなんです」

「うわぁ……」

 

女子高生は筆者を軽蔑するような、あるいは汚物でも見るような鋭い視線を残して接客に向かった。これが筆者の日常茶飯事である。一歩間違えればセクハラどころの騒ぎではないが、女子高生側も筆者をイジることを面白がっているようで、人間関係は不気味に調和している。たまにこれでいいのかと我が身の振る舞いを考え直すこともあるが、立ち止まったところで反省をするわけでもないので、その思考自体が用を成していない。これでいいのだろう。

 

「もしかして、俺の方が女子高生より女子高生に精通しているのでは」

 

筆者がそう思い始めるのもまた自然の成り行きであった。数々の図画を拝読し、女子高生とは何ぞやと自己問答を繰り返し、現実の女子高生との会話で仮説のズレを修正する。学問の体を成すまで至った女子高生考究の結果は、こと『女子高生らしさ』においては現役女子高生を上回っているのではないか。一歩間違えれば本末転倒なインスピレーションに突き動かされ、筆者は例の女子高生を前にいきり立った。

 

「ちょっと君」

「なんですか」

 

満を持して筆者は言う。これが女子高生研究の最新レポートである。二年間に渡る膨大なデータを礎とし、論理的手順を踏んで矛盾なく道筋を立ててきた。あるいはそこに詭弁が混じっているかもしれない。欠缺があるかもしれない。しかしそれらを含め筆者の大学生活の集大成である。玉石混淆の成果物を、今ここでプレゼンテーションするのだ。

 

「もしかしたら俺の方が君より女子高生に詳しいと思うんだけど」

「は?気持ち悪いんですけど。もうお客さん来るので卓セットしてください」

「はい」

 

『気持ち悪い』という穴一つない完璧な論理に基づく反論に返す言葉もなく、筆者は独り労働に勤しんだ。