オタク自省録

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読書記録 空飛ぶタイヤ

先日インターンが終了した。人生初のまともに最後まで業務を遂行したインターンであり、同時に人生で最も頭を使った五日間であった。詳細は割愛するが、学歴云々ではなく、本当に頭が良い人というのはすごいなぁと、小学生並みの感想を抱いた次第である。彼らと肩を並べて仕事をする時が果たしてくるのだろうかと、ゴミオタクながら滔々と流れる時間に漫然としている自分に呆れ、日々食い倒れている場合ではないと自覚した今日この頃。というか、別にこういった機会がなくとも毎日己に呆れ続けているのであるが。

 

自分語りも程々に、本日紹介するのは池井戸潤『空飛ぶタイヤ』である。友人にお勧めされてAmazonにて購入したが、手付かずのまま数か月が経ってしまっていた。年越しまでには読み切りたい。そう思っていた筆者であるが、予想に反し、一週間で読み切ってしまった。

 

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主人公の赤松は親から受け継いだ小さな運送会社、赤松運送の社長をする中年オヤジである。ある日、運送中にタイヤが吹き飛び、女性を轢き殺してしまう事故が起こる。原因は赤松運送の点検不良との判断。取引先や銀行に見放され、社会的にも経済的にも窮地に立たされた赤松であったが、事故を調べていくうちにその車両を作っている大手重工企業に過失があるのではないかと疑念を抱く。窮地に歯を食いしばり、腐敗した大企業に挑んでいくエンターテイメント小説である。

 

筆者は池井戸潤作品を半沢直樹しか知らない。もちろん数年前に大ヒットしたドラマを視聴したのみであるが、どうもこの人の作品では毎度毎度銀行が悪者にされて可哀そうだなぁというのが読後の感想である。それから後半に一気に形勢逆転をさせたいのか、前半には兎角主人公に悲劇が続く。その分物語終盤のカタルシスは計り知れなかったが、上下巻合わせて800ページを超える大作だというのに、ここまで苦境を延々と描写し続けることができる作家というのはかなり珍しいのではないだろうか。筆者は文盲なので、他の作家について多くを知らないので断言はできないが。

そんなわけで、最後の最後まで苦しい展開が続く当作品であるが、苦境の中に一縷の希望が常にあり、この先状況が一転するのではないかと読み手に思わせ続ける工夫(?)がなされていたため、最後まで一気に読み進めることができた。さながらキャバ嬢である。しかし本作品において、キャバクラをはじめとする夜の街を描いたシーンは登場しなかった。なんて考えてると、キャバクラを描いた物語が読みたくなってきた。おススメがあったら教えてください。

 

過去の栄光に縋り続ける腐敗した社会への風刺作品、のように筆者は感じた。大企業という巨大な組織に対し、個人がどれだけ騒いだところで歯車が止まることはない。しかし小さな力が集まると、いずれ大きなうねりが生じる。あきらめないことが重要である。そんなことを教わった一冊である。

うまい具合に纏めたが、主人公が真っ直ぐすぎていじりようがない作品であった。性根がねじ曲がっている筆者としては、むしろ敵として描かれていた銀行やら上層部の腐敗した連中の方に共感を覚えてしまったというのが本音である。そりゃあ今まで築き上げてきた地位やら利権やらをミジンコみたいな奴にかき乱されちゃたまらんでしょう。筆者だって、底辺飲食店のバイトリーダーをやっていなければ女子高生と話すことができないわけであるし、誰が何と言おうとこの椅子だけは固持したい。固持したすぎて個人事業主登録すらある。

自分の座る椅子はゆるぎないものにしなければならない。もしかしたらそんな教訓も暗示している作品なのかもしれない。多分違うと思う。