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オタク自省録

オタクのオタクによるオタクのためのブログ

オタクのドスケベコスプレイヤー即売会入門

オタク諸君にとっては馴染み深いワードであろうコスプレイヤー』。その中の一部のジャンルに『ドスケベコスプレイヤーというものがある(俺が勝手に言いだしただけ)。恥部以外の布面積を極限まで削減することに血道を上げるコスプレイヤーの総称で、中にはアダルト部門ということで恥部すらも露出させた写真集を作り上げている方々もおはしますという。

ある日、友人のオタクが「即売会行かん?」と、とあるコスプレイヤー即売会のカタログをもってきた。チラ見すると、これはどこからどうみても半ばエロ本である。実にけしからんものをもってきたものだと俺は呆れ返り、その後の講義室で熟読玩味した。

 

気がつけば俺は馬喰町に降り立っていた。そう、件のドスケベコスプレイヤー即売会に参列する心積もりである。友人のオタク(これは他言無用だが、彼はEDを患っているとのことなので以降EDと称する)の影に隠れながら、おそるおそる会場へ向かう。駅の構内で既にヤバそうな雰囲気は感じていたが、多分この直感はあっているとED君も言っている。喪女っぽい女性や、ハゲ散らかした男性などが俺たちと同じ進行方向に足を進めている。そういうことだろう。

会場には開場30分前に到着した。はずなのだが、既に長蛇の列を成している。そしてそれを構成するは夥しい数のオタク。その9割は40〜50歳と思しき男性で、残りの1割が女性や若人であった。しかしそのオタクの風貌たるや、筆舌に尽くしがたいものがある。俺の想像の遥か上を之く重篤なオタクたちが見事な団体行動をみせていた。あれは四列縦隊だった。

 

これだけの生理的嫌悪感を持つオタクたちがインターネット上で蠢いていると思うと、俺が根城としているTwitterその他ネット界隈が突然気色の悪い蟲の巣に変容した気分である。嫌悪感はその外見のみならず、「去年はこんなじゃなかった」「ちゃんとやれよ」とスタッフに理不尽の暴力を浴びせるオタクや、ちょうど隣が開場となっていた結婚式場から苦情が入り、警察による行政指導を受けるオタクの言動にも及ぶ。想像を絶するキモオタクを前に「でも俺らも同じ穴の狢なんだよな」と同族嫌悪を禁じ得ない。オタクとは罪深い生き物である。

 

そうこうしているうちに開場となり、4階にも及ぶ大イベントが始まった。文句ばかり言っていても仕方がない。郷に入れば郷に従え。自らの足でここに来たのだから、俺もまたキモオタクとして振る舞う意思を見せねばならぬ。気持ちを切り替え、俺達は入場した。

コスプレイヤー即売会。まず特筆すべきはその異様な臭気であろう。空調を回しているはずなのに外気の数倍蒸し暑い。そしてアクティブな男オタクから発生するオタク特有の腐臭もまた一段とキツい。マスクをしてくればよかったと後悔した。そして何より人の数。どこに進もうにも肉の壁が邪魔をして進退叶わない。しかしそれはこの会場にいる誰もが思っているようで、密度が高いブースではオタクがオタクにより雁字搦めとなっていた。

いよいよ読者諸賢が最も気になっているであろう、ドスケベコスプレイヤーその人の描写に入る。Twitterに流れてくるあの画像は虚実がほとんどと言わざるをえない。コスプレイヤー本人と、彼女らの手に持たれた写真集の表紙と、そこに同一性が凡そ一つも感じられない。とはいえ、やはり大きなイベントということもあり、同一性が認められる方々も多々おられるが、何より感じたのは、コスプレはカメラを通した世界の中の作品なんだな、ということだった。その点彼女らの自らを理想像に近づける努力は目をみはるものがあったような気もする。

そうはいっても、大した手入れもなしに肌を露出させる彼女らには女性としての自覚はないのかと勝手に憤ったりした。それは衣装なのか下着なのか、あるいは衣装かつ下着なのかわからない謎めいた衣服を着ている方が多々おられたが、皆ケツがだらしない。ケツを晒すのであれば、垂れ下がって締まりのないケツに多少の筋肉をつけてからにしていただきたい。俺のケツのほうがケツとしてのランクは上だと思う。

 

なお、オタクの中にはカメラ小僧、通称カメコというクラスタがおり、彼らの被写体に対する情熱は尋常ではない。列を成す撮影会。その最前列でドスケベ衣装に身を包まれた、あるいはほとんど包まれていないコスプレイヤーに渾身の思いでカメラを向ける彼らの姿には嫌悪感を通り越した畏怖を感じてしまう。彼らもまたアーティストでありクリエイターということか。

カメコが一箇所に群がり、餌を貪る小動物のようにシャッターを切る姿を目の当たりに、「この光景を撮りたいなぁ」なんて呟いたら、スタッフの方に「それはダメですよ」オタク特有の早口で言われた。ちなみにオタクに小動物的愛らしさはないので、小動物のように、という比喩は間違っているかもしれない。

 

結局俺達はプロオタクの方々に圧倒されつつ開場を何度か順繰りし、最終的に某ドスケベコスプレイヤーさんのブースで「暑いですねぇ」みたいな世間話をして帰った。世間話をしてくれたレイヤーさんは俺達に「頑張ってくださいね」とエールを送ってくれたが、頑張るのは俺達ではなく彼女の方だと思った。あるいは、即売会ガチ勢は本当に血肉を捧げる思いでここに来ているのだから、頑張っての対象になるのだろうか。

改めて開場を眺めてみると、ブースに来てくれたオタクに対して、屈託のない笑顔を振りまき、感謝や励ましの言葉を投げかけ続けるドスケベコスプレイヤーの姿が目に留まる。なるほど、と、俺は何かが腑に落ちたような感触を得た。それはおそらく今後の人生で前向きに作用する何かではないと思われるが、ある種の経験として俺の中にまたひとつ不純物が堆積したように思えた。

 

「ねえEDくん」

「何」

「ドスケベコスプレイヤーは偉いなぁ」

「それはそう」

 

そんな感じで、俺のドスケベコスプレイヤー即売会の思い出は締めくくられた。