週刊文盲 オタク自省録

オタクのオタクによるオタクのためのブログ

読書記録1 終末何してますか?もう一度だけ、会えますか?

週刊分盲と銘打っておいてやはり週刊できない当ブログ。しかし今回ばかりはテスト週間という言い訳をさせていただきたい。学生の本文は命ある限り快楽を求めることだが、単位という留保が付されていることは誰もが承知であろう。ゴミオタク大学の学生もまた、単位の留保に悩まされているのである。

 

しかしながら、俺には単位以上に苦しまされている悩みの種がある。詰み本の山だ。試しに床に並べてみるとフリーマーケットが展開できそうである。以下の写真が俺が読みもしないまま家屋に放牧している本たちである。

 

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本を消化する前に新たな本を買うという、計画性を敢えて度外視することで精錬された晴耕雨読の産物である。闇雲に書物を買いあさることは精神衛生上著しい効用があるように思う(読んでもいないのに読んだ気分になれる)が、山積する書物が我が6畳間の大部分を侵食し、生活に支障をきたし始めている。ええ加減読みなされ。本の神様もそう言っておられる。

というわけで、さっさと読んで読んだ分だけ軽くレビューしていこうと思う。結局このブログの目的は定まらないままということだろう。

 

記念すべき一冊目はこちら。

 

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オイオイオイ、ラノベだわこいつ。などと侮ることなかれ。かくいう俺も、ライトノベルは中学時代に卒業し、かれこれ五年近く触れていない。それなのになぜラノベに着手したのかというと、ラノベとはいえ本は本だから』である。ラノベを毛嫌いする前にラノベを理解しろと、仙人と天狗と中年関西弁男性を足して割ったようなオタク友達に言われたこともある。四の五の言わずにレビューさせろや。

 

アニメ化もしたらしく、タイトルから漂うセカイ系の臭いとどことなく感じる哀愁に惹かれ購入した一冊である。俺は完全にこれが原作とばかり思っていたのだが、『終末何してますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』などという原作のスピンオフ作品らしい。オタク世界を厭世して無常なる大衆文化の荒波に流されて早5年。にわかオタクもどきと化した俺にそんな区別がつくわけもなかった。

内容はやはりセカイ系の物語である。突然発生した〈十七種の獣〉によって地上は滅ぼされ、人々は浮遊大陸群に避難した。あらゆる武力が通用しない〈獣〉は空まで登ってこれないからである。主人公は浮遊大陸群唯一の軍隊の四位武官であり、〈黄金妖精〉とかいうキナ臭い少女たちの面倒を見ることになる。みたいなあらすじだ。

 

最初の弁明として、この物語に異世界転生やハーレムや主人公最強要素はない。最近のラノベはこれらの要素がないと売れないのではないかと蚊帳の外から心配していたが、どうやら杞憂だったようだ。そして世界観が非常によくできている。前述した元ネタ作品の5年後の世界を描いたものであるからだろうか。俺が想像していたラノベのはるか上をいく作品に感じた。

作品を通してのテーマは『命の価値』みたいな感じだと思う。セカイ系作品にありがちなやつだ。主人公は大義を背負って処刑された義兄のことを根に持ってるし、〈黄金妖精〉とかいう種族(?)のヒロインたちは自然現象に近く生命体と呼んでよいのか不明な存在で、自らの命を擲つことで〈十七種の獣〉に唯一対抗できる〈遺跡兵装〉とやらを発動させることができるらしい。自らの存在意義に疑念を抱く少女たちと、命の軍事転用に葛藤を覚える主人公の心情描写で作品の世界に引きずり込まれる。ただ文章力は作家にやや劣る気もする。

 

特筆すべきは中二病患者を虜にする固有名詞及びその内容であろう。例を挙げると〈十七種の獣〉のうちの一体に〈重く留まる十一番目の獣〉というのがいる。ルビは「クロワイヤンス」である。元ネタを調べたが造語らしい。こいつは〈獣〉とは名ばかりで、あらゆる有機物やエネルギーを吸収して増幅する動く黒水晶である。物語の描写的にも意思があるようには思えない。こんな不思議設定のキャラクター(?)がてんこ盛りと思うと、中二病を持病認定された俺のようなゴミオタクは興奮がとまらないのである。(後から振り返ると、ギャルとビーチに行く今年の夏の方が興奮した)

そしてもう一つのアピールポイントは背景となる社会的構造である。まず種族が豊富である。人間種は〈獣〉によって滅ぼされたらしいが、堕鬼種だの鷹翼種だのやたら細かい。それとは別に、獣的特徴がない〈シルシナシ〉という隔世遺伝のような存在もあり、人間種に似てるからとほかの種族から忌避されている。ここに人種差別の背景が描かれている。(ただ物語にそんな関係ない気がする)

それから私利私欲のため〈十七種の獣〉を地上から回収した商業主義国家の存在や、浮遊大陸群に軍隊が一つしかないことを危険視する組織なんていうのが、主人公たちの行動の裏でじわりじわりと動いている描写がまた良い。あからさまに物語の転とするのではなく、伏線を散りばめるスタンスは僕は好きです(主観)

 

ざっとこんなところか。ラノベを堪能したので次は作家の本でも読みたいと思っているのだが、来るべきインターン面接のために堅苦しく分厚い本を読破する必要に迫られているのが現実である。

また何かを読み終えたらレビューをしようと思う。以上。

健康で文化的な最低限度の生活

記事のタイトルをご覧いただきたい。憲法25条に明文されている生存権の内容である。法学徒でなくとも、どこかしらで目にしたことがあるフレーズのはずだ。俺は法学徒なのだから25条の言う健康で文化的な最低限度の生活を法的に分析すべきなのかもしれない。しかし、健康で文化的な最低限度の生活をおくること能わない人間に、健康で文化的な最低限度の生活が語れると思うか。俺はそうは思わないし、何より健康で文化的な最低限度の生活というフレーズをこの段落だけで4回も使用していることに歯がゆさを感じるので、これ以上健康で以下略について学術的分析を加えることは控えようと思う。読者のためである。

 

ところで読者諸賢の日々の生活は満足のいくものだろうか。俺は全く満足していない。不眠症に苛まれ朝日とともに無理やり寝つき、おやつの時間に絶望の起床を迎え、学生の本業たる大学での講義を悉く退け続けている典型的ゴミ大学生活。それが俺の毎日だった。この腐りきった生活を、あるいは根性を叩き直すため、俺は『健康で文化的な最低限度の生活』座右の銘とし、日々の生活改善コンサルティングを行うこととした。

『健康』とは即ち衰えることのないほど良い肉付きの身体を意味する。飲む食う寝るの三連コンボでは、決して強靭な肉体は出来上がらないだろう。健全な魂は健全な肉体に宿るのである。しかし経験上、程よい筋肉を身に着けた人間の方が淫らな性根をしているような気がするのだがそこのところどうなのだろうか。

『文化的』とは学術的活動を意味する。酒と女に溺れるゴブリンめいた中年男性に文化的魅力は無いだろう。俺はコーヒーショップの一席でシルクハットと杖を構えエロ本を読みふけるような初老になりたいと考える。また、女子高生を神聖不可侵なものとする名もなき宗教の教祖としても、来るべき女子高生との接触に備え、一目おかれるような知見と経験を備えなければならない。文化的という側面は、なくてはならない重要なファクターである。

『最低限度』とは最大限度を意味する。何を言っているのかわからないという読者はおそらく秋空の如き女心を微塵も理解していない愚者であろう。「もう連絡しないで」と言っておいて連絡を絶つと逆ギレしてくるのが大和撫子である。

 

座右の銘の定義を明らかにしたところで、実際にどのような行動でこれを実現すべきか考えてみた。その結果が以下である。

 

・一週間に3冊の読書

・一週間に3日のジム通い

・一週間に2本の映画鑑賞

・一週間に飲酒は一度まで

行政書士向けに商法を終わらせる

 

これが俺の最低限度(最大限度)かと思うと悲しくなるものがある。しかし現実は受け止めなければならない。七月から俺は生まれ変わるのだ。今までの俺とは一味も二味も違うということを知らしめてやる。親に見られても恥ずかしくない毎日を送るのだ!意気込んだ俺は七月第一週に突入した。

 

月曜日

一週間の始まりにふさわしい絶望の起床を迎えた。気づくと2限の民事訴訟法の授業は終わっており、3限以降の授業に出ようにも遅刻しかねない。俺は潔く安眠を選択した。そしてその日は家から一歩も出ず、その代償として超高速!参勤交代なる小説を読破した。

 

火曜日

3限の授業にギリギリ出席した。しかし授業後に図書館でしようとした商法の学習を図書館に踏み入るより先に断念し、そのままバイト先に向かい、月収20万を自慢する社員のもと、優秀で勤勉な労働力となった。帰宅後泥のように眠る。

 

水曜日

サークルの飲みがあるらしく、その時間に間に合わせるため5限労働法に敢えて出席しない英断を下した。8人ほどの少人数で行われた飲み会では日本酒一気飲みが断行され、酩酊千鳥足の百鬼夜行を成した。

 

木曜日

この日は授業がなくバイトのみである。バイト前にジムに通い、前日のアルコールでむくみ切った心身をリフレッシュしようと目論むも、ベッドと冷房の策略に嵌り無事断念。断続的な睡眠ののち月収20万に酷使され、松屋の牛丼を貪りまたベッドにダイブ。

 

金曜日

この日も授業なしバイトありの日程。いい加減ジムに通うべきなのだが残念ながら金曜日は定休日であるため運動はできない。せめて読書をと本棚を漁るも、それなりに膨大な本の山の整備に着手してしまい、気が付けば月収20万に呼び出される時間であった。帰宅後女児向けアニメの録画を視聴し、そのまま翌日の朝を迎えた。

 

土曜日

日の出とともに睡眠を開始し、バイト直前に起きるいつもの堕落具合である。一週間を振り返り、目標が何一つ達成されていないことに焦りを感じ、バイト先の麦酒樽を持ち上げるなどして筋トレを開始した。翌日に筋肉痛が訪れたためこの目論見は功を奏したと思われた。

 

日曜日

突発的に予告されるサークル飲み会。実質幹部の俺が参加しないというわけにもいかず、なんとか時間を創出してジムへ向かい、そのままおバカ大学生の宴へ。ピッチャー飲みをして店員に怒られたあたりまでは記憶している。その後のことはわからない。

 

掲げた目標を一つたりとも成し遂げることができずに七月第一週が終わりを告げた。『健康で文化的な最低限度の生活』侮ることなかれ。歴史的敗北を喫した俺は目標の再建を図るべきなのだろう。それゆえ、新たな七月の目標は以下のようになった。

 

・実現可能な目標を設定する

 

「進捗があれば報告します」酒を片手に氏はそう言ったという。

オタクがイキる日

その日はかねてより心待ちにしていたハレの日であった。とある筋で知り合った同郷の後輩(女性)を酒の場に招待したその日である。「美味しいお酒を飲ませたるわ!」と、気持ちの悪い中年男性が部下に投げかける常套句に似た誘いをしておいたのだ。俺が後輩ちゃんであったらやんわりとお断りするところを、彼女は慎ましく承ってくれた。これを好機とみた俺は、速やかに彼女と同じサークルに属する生粋の邦楽徒にして勃起不全障害のEDくんを招致し、俺の持つ全情報網を駆使し探し出した洒落たダイニングバーの予約をした。あとは後輩ちゃんと入店するだけである。

 

店に彼女を招待した後に我々オタク(俺とEDくん)が何を為そうとしているのか。言うまでもなく、イキりたいのである。EDくんはともかく、俺は先輩風をむやみに吹かせることだけを生きがいに後輩と接触している不逞の輩である。上京したての一人娘にきらびやかな都会の一端を見せつけ「こんなの普通だよ」とスカしたことを言わんとしているのであった。

その一方で、俺は世に言う『イキりオタク』を全般的に毛嫌いするオタクである。イキりオタクの定義は定かではないが、どうやらそこに俺は分類されていないらしい。法律を学んでいるとは思えない、実にフレキシブルで身勝手な定義である。俺はこの夜、自分のことを棚に上げ、全身全霊をもって先輩風を吹かせることに血道を上げた。棚に上げるだけでは飽き足らず、棚の奥底に自らを埋葬さえした。

 

「なんかすごい店ですね!」

 

そこは大学近郊の街にある、我々オタクには似合わない小洒落たダイニングバー。後輩ちゃんの声で我に返った俺は、『できる先輩』を装おうと不慣れな手つきで店員を呼んだ。

 

「ビールとジントニックを。後輩ちゃんは?」

 

俺がジントニックを頼んだのは、「一杯目はビール」等という悪しき慣習を後輩ちゃんに感じさせないためだ。そもそもビールなどという苦いだけの液体を好んで飲む人種は味覚障害ではないかと真面目に思っている。俺はブラックコーヒーに角砂糖を4つ放り込む大和男子である。

 

「あっ、私もビールでお願いします!」

 

而して後輩ちゃんは苦いだけの液体を好んで飲む人種であった。「私ビール好きなんですよ!」ハツラツと答える彼女の笑みは純粋無垢そのもので、口元から覗く八重歯がなんとも愛らしかった。この時俺はおそらく、「一杯目はビール」を共用する中年男性と比類のない妙ちくりんな顔をしていたと思われる。俺が偽装せんとした先輩風は早くもハリボテの体であった。

それからしばらくソーセージなどをツマミに小洒落たダイニングバーを満喫した。EDくんはカクテルに造詣が深く、メニューに乗っている不思議な名前のカクテルについて尋ねると反射的に正確な配合を答えてくれる。後輩ちゃんの「これってどんなお酒ですか?」に対し、俺が開口するよりも早く解説を入れるので、俺の存在価値は塵のごとく霧散した。ちなみに俺が唯一わかったコムズカチイ酒の名は「コカレロ」のみであった。

しかしEDくんは決して憎めぬ為人をしている。後輩ちゃんがお手洗いへと席を立った時、我々は化けの皮を剥ぎ「可愛い女の子と酒を飲むことが人生の醍醐味ですなぁ!」非常にいい気になった。後輩ちゃんが戻ってくると瞬時に出鱈目な先輩風を吹かせようと奮闘した。

そうしてダイニングバーでの至福のひとときが過ぎ去った。

 

「今日はご馳走様でした!」

 

本心からディナーを楽しんだと言わんばかりの笑顔でそう言う後輩ちゃんに対し、EDくんは

「これから俺らバー行くけど、来る?」

と、予期せぬ二次会を提案した。俺はこのときほどEDくんを頼もしく思ったことはない。いや、テストの時にレジュメ全部もらったときのほうが頼もしかったけど。

バーという大人の世界を匂わせる響きに、天真爛漫で好奇心旺盛な後輩ちゃんが食いつかぬわけもなく、俺達は以前EDくんと発掘したオタクに似つかわしくない上品なバーへと足を運んだ。

 

バーの酒は美味い。普段居酒屋で泥水のような酒を飲んでいる俺でもそれだけはわかる。高度に抽象的な注文をしてマスターを困らせた挙句、美麗かつ芳醇なカクテルが俺達の前に並んだ。

後輩ちゃんの気分をグラスの上に具象化したカクテルという作品。それを口にした時の彼女の表情を今でも覚えている。EDくん曰く「あそこまで美味しそうにカクテルを飲む人を見たことがない」。先輩風を吹かせることも忘れ、俺とEDくんは彼女の横顔に魅了されていた。

 

そうして気づけばオタク二人は日高屋でラーメンを啜っていた。二軒目を含めて会計は20000円となり、後輩を前にイキりたい俺達は当然後輩ちゃんの代金を負担し、知らぬ間に貧乏学生にしては恐ろしい金額を一晩で溶かしていた。

 

「でもまあ、一万円で後輩に楽しんでもらえるならいいんじゃない?」

「それもそう。また後輩ちゃんと飲みたい。」

 

イキり切れなかったオタク二人は夜の街で気持ちよく笑った。